
アラブ首長国連邦(UAE)では、国民一人ひとりの遺伝子情報(ゲノム)を活用して、病気の予防や最適な治療法の提供を目指す最先端の医療プロジェクトが進んでいます。
この取り組みは「エミレーツ・ゲノム・プログラム」と呼ばれ、2019年に首都アブダビでスタートし、現在では全国規模へと拡大しています。
◆ 80万人以上のデータを収集
このゲノムプログラムでは、UAE国民約100万人のうち、すでに81万5,000人分の遺伝子サンプルが集められました(2024年時点)。
採取は病院やクリニックなど、全国の専用センターで本人の同意を得て任意で行われており、情報は厳重に管理されています。
この膨大なデータを活用することで、UAE政府は病気になる前の早期発見や予防、そして一人ひとりに合った薬の処方(精密医療/プレシジョン・メディスン)を実現しようとしています。
◆ 「病気になる前に防ぐ医療」へ
これまでの医療は、症状が出てから治療を始める「対処型」が中心でした。しかしゲノム情報を使うことで、将来かかるかもしれない病気のリスクを事前に把握し、予防策をとる「予測型医療」への転換が可能になります。
例えば、がんや遺伝病の中には特定の遺伝子変異によって起こるものがあり、BRCA1やBRCA2といった遺伝子が変化していると乳がんや卵巣がんのリスクが高くなることが知られています。
こうした変異の有無を早く知ることで、生活習慣の見直しや定期検査を通じてリスクに備えることができます。
また、親戚同士の結婚が多い文化では、遺伝性の病気(例:鎌状赤血球貧血)の発症リスクも高くなる傾向があります。ゲノム解析によって、そうしたリスクも正確に把握できます。
◆ 創薬にも期待、AIとバイオ技術で加速
このプロジェクトを支える医療テクノロジー企業「M42」は、英国のバイオベンチャー「Juvenescence」と提携し、AI(人工知能)を活用した新薬の開発にも取り組んでいます。
通常、新しい薬を開発するには15~25年かかると言われていますが、AIの活用により、膨大なゲノムデータから効率的にターゲットを特定し、開発期間を短縮できる可能性があります。
M42の幹部は、「新生児の段階で将来の病気を予測し、発症前に防ぐような医療が目指せる」と語っています。
◆ 世界を見据えたアブダビの挑戦
この取り組みは単なる国内医療の強化にとどまらず、アブダビを「医療・バイオ分野の国際的なイノベーション拠点」にするという大きなビジョンの一部でもあります。
M42のCEOは「このプロジェクトは単なる技術革新ではなく、人々の命を救い、未来の医療を切り拓く取り組み」であると強調しています。
【まとめ】
- UAEは2019年から国民の遺伝子情報を収集する国家プロジェクトを実施中
- すでに81万人以上のデータを収集、早期発見・予防医療を実現へ
- がんや遺伝性疾患のリスク把握、個別最適な薬の開発にもつながる
- AIと連携した創薬にも注力、アブダビを医療革新都市へ
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