暗号資産の急速な普及により、世界的な投資拠点として注目を集めるドバイ。しかし、その発展の裏で、ハッキングを含むサイバー犯罪のリスクが増加しています。高度なセキュリティ対策が求められる一方で、攻撃者の手口も巧妙化しており、個人や企業が被害に遭うケースが後を絶ちません。暗号資産を取り扱う際には、リスクを理解し、慎重に行動することが、投資家にとって成功への鍵となります。
ドバイにも地域本社を置くブロックチェーン分析企業のChainalysisの調査によると、2024年に盗まれた仮想通貨の価値は約22億ドルに達し、そのうちの60%以上が北朝鮮関連の攻撃によるものだと調査で判明したと述べています。
この数字は前年から21%以上の増加を記録し、4年連続で10億ドルを超える被害額となっています。
特に2024年の盗難被害は過去3番目に大きく、2021年の33億ドル、2022年の37億ドルに次ぐ規模です。また、ハッキングの件数も前年の282件から302件へと増加し、2年連続で上昇しました。
暗号資産のリスクと注意点
専門家の間では、暗号資産に投資する際のリスクへの注意が強調されています。フィンテック業界のアナリストであるMs. Shamsuddin氏は、「余裕のある資金だけを使い、入念な調査を行うべきだ」と警告しています。彼女自身もビットコインやNFTに投資していますが、過度な依存や借金を避けるようアドバイスしています。
一方、暗号資産に関連する悪意のある行為は、全体のブロックチェーン活動のごく一部に過ぎないとされ、暗号資産が持つ潜在的な可能性に焦点を当てるべきとの意見もあります。Chainalysisの中東・アフリカ地域政策責任者Arushi Goel氏は、「規制が整備された国では、マネーロンダリングやテロ資金供与防止の取り組みが進んでおり、安全性が向上している」と述べています。
業界の課題と改善
暗号資産業界は2022年にいくつかの大手企業が破綻したことで信頼性が揺らぎましたが、2024年には新たな盛り上がりを見せています。特に、2024年11月の米国大統領選挙でドナルド・トランプ氏が暗号資産を支持する姿勢を示したことで市場は活気づきました。ビットコインは選挙後に価格が急騰し、12月には史上最高値の10万6500ドルを記録しましたが、その後の政策発表によって一時的に価格が下落しました。それでも、ビットコインの市場価値は2兆ドルを超え、暗号資産全体の市場規模は3.5兆ドルに達しています。
セキュリティと法的対応
暗号資産に関連する犯罪を抑制するため、企業はセキュリティ対策の強化を進めています。法執行機関の支援を受けた追跡会社も増加しており、これらの企業は元ハッカーを雇用することで技術的な優位性を保っています。このような取り組みにより、特定地域での犯罪抑制や、犯罪の収益を追跡する能力が向上しています。
一方、中東・北アフリカ(MENA)地域では暗号資産の利用が活発化しているにもかかわらず、犯罪件数の増加は抑えられています。これは、同地域における規制強化やセキュリティの向上による成果と考えられています。
未来への展望
暗号資産業界は、引き続き規制の整備やセキュリティ強化を進めながら成長を続ける見込みです。特に、トランプ氏の規制緩和の提案は市場に新たな活力をもたらすと期待されています。このような動きは暗号資産全体の価値向上につながり、今後もさらなる普及が見込まれるでしょう。