ドバイは、Web3の世界的な拠点として急速に成長しています。政府の先見性ある戦略と技術革新を積極的に取り入れる姿勢により、Web3分野で先進する各国との競争の中でも頭角を現しています。本記事では、ドバイがなぜWeb3の先進的な地位を確立できたのか、その背景を分析し、注目される企業や今後の展望について詳しく解説します。
Web3 先進国ランキング 2024
©Coincubが公表する「THE GLOBAL WEB3 INDEX 2024」レポートをソースとしています。
特徴 | |
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1. スイス | スイスは、規制の透明性と安定性、税制の優遇措置でWeb3においてリーダー的地位を確立しています。 スイスのブロックチェーンなどWeb3関連企業が集まる「クリプト・バレー」には、ブロックチェーン技術と仮想通貨企業にとって有利な環境から、1000以上の企業が集まっています。 このエコシステムは、チューリッヒ大学のブロックチェーン研究センターのような世界クラスの機関によってサポートされています。 スイスはまた、世界で最も密度の高いビットコインATMネットワークを運営しており、暗号インフラストラクチャをさらに強化しています。 |
2. シンガポール | シンガポールは柔軟な規制とキャピタルゲイン非課税が特徴で、Web3企業やスタートアップの集積地として成長中です。MAS(金融監督庁)が明確な指針を提供し、投資家と企業にとって予測可能な環境を提供。国際的な投資ネットワークが広がるアジアの中心です。 |
3. ドバイ(UAE) | UAEは、その進歩的な規制の枠組み、戦略的な経済政策、ブロックチェーン技術への多額の投資など、暗号資産に対する政府の支援的な姿勢からグローバルリーダーとして急速に台頭しています。 ドバイの仮想資産規制当局(VARA)とアブダビ・グローバル・マーケット(ADGM)は、コンプライアンス、リスク管理、消費者保護のための強固な枠組みを確立し、UAEを暗号資産ベンチャーにとって非常に安全で魅力的な目的地にすることを推進しています。 税制優遇と規制の明確さにより、BinanceやCrypto.comなどの主要企業が拠点を設置しています。 また、人口の25.3%が暗号資産を所有しており、世界で最も暗号資産所有率が高い国でもあります。 |
4. アメリカ | アメリカはシリコンバレーを中心に、技術革新と資金調達で他国をリードしています。多くのスタートアップが生まれる一方、規制の不透明さから様々なプロジェクトや取引所に対する多数の訴訟につながり、経済界の一部から「アメリカの暗号資産は終わった」などネガティブな意見も。 |
5. エルサルバドル | 世界で初めてビットコインを法定通貨化。税制優遇と規制緩和で暗号資産関連企業を誘致し、ビットコインシティ計画でWeb3エコシステムを育成中。国としてWeb3の普及を国家戦略に据えている。しかし多くの国民は日常的な決済ではビットコインよりも米ドルを使用している。 |
6. カナダ | カナダは機関レベルで顕著な存在感を示しており、22社が国庫にビットコインを保有しています。また、分散型金融(DeFi)やNFT分野の成長が顕著で、教育機関や研究機関が技術革新を支える基盤。規制は比較的柔軟で、Web3スタートアップにも適した環境。ビットコインATMの数はアメリカの数に次ぐ多さ。 |
7. トルコ | トルコは暗号資産の採用率が高く、特に若年層で普及。リラの不安定さを背景に、暗号資産が決済や資産保全の手段として広がる。政府もWeb3技術の導入に注力し、スタートアップの成長を支援。 |
8. ドイツ | EU内でWeb3規制の整備が進む。セキュリティトークンの合法化や分散型金融の採用が特徴。銀行が暗号資産サービスを提供し、NFTやメタバース分野のプロジェクトも増加。環境への配慮も進行中。 |
9. 香港 | 中国市場へのアクセス拠点として重要。NFTやDeFiプロジェクトが成長しており、政府はWeb3関連事業への支援を拡大。一方で、地政学的リスクがエコシステムの発展に影響を与える。 |
10. リトアニア | リトアニアはEU内での暗号資産規制の先駆者。銀行口座と暗号資産を統合したサービスが普及しつつあり、小規模ながら効率的なWeb3エコシステムを構築。スタートアップを支援する政策も進展中。 |
「Global Web3 Index 2024」の評価方法は、公開ソースと専門家の洞察からデータを収集し、規制、課税、エコシステム、人口採用、人材、暗号金融サービスの6つの側面で国ごとに53のデータポイントを評価。
税制が課題の日本は43位
上位の他国はゼロ課税や税制上の優遇措置を提供している一方で、2024年時点の日本では、仮想通貨の売買による利益が「雑所得」として扱われ、総合課税の対象となっています。その結果、所得税と住民税を合わせた最高税率が55%に達する可能性があり、キャピタルゲインに関する課税問題が普及の遅れの要因にもなっています。
自民党のWeb3プロジェクトチーム座長であり、現デジタル大臣である平将明議員と、初代デジタル大臣の平井卓也議員の協力により、「Web3ホワイトペーパー2024」が公表されました。このホワイトペーパーには、世界で加速するWeb3分野において、日本が取るべき発展戦略が提言されており、重要課題として暗号資産の税制問題が取り上げられています。
すでに世界から遅れを取っている日本において、普及のためには国民が納得できる迅速な税制改正が求められています。
ドバイがWeb3に先進的な理由
政府の先進的な取り組み
ドバイ政府は、Web3の技術を都市運営に統合し、国際的なハブとしての地位を確立しようとしています。
- ドバイ・メタバース戦略
2030年までに、メタバース関連技術で4万件の雇用を創出し、経済に約40億ドルを貢献する目標を掲げています。 - クリプト資産規制の整備
ドバイ金融サービス庁(DFSA)は、仮想資産やブロックチェーン技術に関する透明で包括的な規制を整備し、企業が安心して事業を展開できる環境を構築しています。 - ドバイの仮想資産規制当局 (VARA)
Web3および仮想通貨関連企業の規制を担当。Web3プロジェクトのライセンス発行や、消費者保護と市場の透明性を確保する。
経済特区と税制優遇
ドバイ(UAE)では暗号資産の売却によるキャピタルゲインに対して、個人投資家も法人(一定条件まで)も課税されません。
また、ドバイの経済特区(DMCCやDIFCなど)は、スタートアップやWeb3関連企業が事業を開始しやすい環境を提供しています。税制優遇措置により、クリプト関連事業のコスト負担が軽減されていることも魅力です。
技術インフラの整備
高速5Gネットワークや大規模データセンターといった技術インフラが整備されており、分散型技術を活用するWeb3.0企業にとって理想的な環境となっています。
グローバルアクセスの利便性
ドバイは中東、アジア、アフリカ、ヨーロッパへのアクセスが容易であり、国際的なビジネスハブとして理想的な場所です。この地理的優位性は、Web3の国際市場を狙う企業にとって大きな魅力となっています。
ドバイに地域拠点のあるWeb3関連企業
Binance(バイナンス)
- 概要: 世界最大級の仮想通貨取引所であり、ドバイに大規模な拠点を構築。
- 活動:ドバイのクリプト資産規制の整備を受け、2022年に規制承認を取得。ドバイを拠点に中東・北アフリカ(MENA)地域のハブとして展開。
Crypto.com
- 概要: 仮想通貨ウォレット、取引所、DeFiプラットフォームを提供。
- 活動:ドバイで規制ライセンスを取得し、ローカル市場向けサービスを強化。
Bybit
- 概要: 仮想通貨の先物取引とスポット取引プラットフォーム。
- 活動:ドバイに移転後、MENA市場へのサービスを拡大。
OKX
- 概要: グローバル仮想通貨取引所。
- 活動:ドバイでVARAからライセンスを取得し、地域での影響力を強化。
Coinbase
- 概要: 世界的に有名な仮想通貨取引プラットフォーム。
- 活動:ドバイを含む中東地域での展開計画を進行。
Unstoppable Domains
- 概要: ステーブルコイン「USDT」を提供する企業。
- 注目ポイント:ドバイでの法定通貨とクリプト資産の橋渡し役として活躍。
Emaar Properties
- 概要: 大手不動産開発会社で、ブロックチェーン技術を活用したポイントプログラム「EMR」を導入。
- 注目ポイント:ブロックチェーンを活用した顧客ロイヤルティプログラムを開発。
Rain
- 概要: 地域をリードする仮想通貨取引所。
- 注目ポイント:中東・アフリカ市場での仮想通貨普及を推進。
Web3を先進するドバイの今後の展開
メタバースの中心地化
ドバイ政府は、「メタバース戦略」を2022年に発表し、2030年までにメタバースを通じて4万件以上の雇用を創出し、経済に約40億ドルを貢献する目標を掲げています。この取り組みは、以下のような形で進化する可能性があります:
- 都市インフラのメタバース統合: 公共サービスや都市設計の一部が仮想空間上で運営され、住民が仮想と現実の融合した体験を享受できるようになる。
- 教育・ヘルスケアへの応用: メタバースを活用した教育プログラムや医療シミュレーションが普及し、効率性とアクセス性が向上する。
規制とガバナンスの高度化
Web3やブロック技術チェーンの急速な進歩に対応するため、今後はさらなる透明性と効率性の向上が求められます。
- グローバル標準をリードする規制:クリプト資産やスマート契約に関する国際的な基準を定める可能性が高い。
- 分散型ガバナンスモデル: 一部の行政プロセスにDAO(分散型自律組織)を導入し、より民主的で効率的な運営を実現。
Web3技術のスマートシティ化
『スマートドバイ』戦略、都市全体のデジタル化計画が進められています。Web3の技術は、スマートシティの基盤としてますます重要になります。
- IoTとブロックチェーンの融合:インターネット接続デバイス(IoT)のデータをブロックチェーン上で管理することで、データの透明性とセキュリティを強化します。
- カーボンニュートラル都市:サプライチェーンやエネルギー管理にWeb3.0技術を活用することで、持続可能な都市運営を目指す。
グローバルなWeb3ハブの確立
ドバイは、その地理的な優位性と規制の柔軟性を考慮して、以下のようにグローバルなWeb3ハブとしての優位を確固たるものにしておきます:
- 国際的なスタートアップ誘致: 世界中のWeb3スタートアップや技術革新を兼ねて集中させるためのインセンティブな政策を検討。
- 国際協力の推進:他国との提携や共同プロジェクトを強化し、Web3技術の国際標準化を牽引。
人材育成と教育への投資
ドバイが技術の最前線であり続けるには、適切な人材を育成することが重要です。そのため、以下の解決策が期待されます:
- 専門教育プログラム: Web3、AI、ブロックチェーンを中心とした教育カリキュラムを提供する大学や専門学校の設立。
- グローバル人材の獲得:世界中から優秀な技術者や研究者を招き、才能が集まる拠点を構築します。
分散型金融(DeFi)の普及
すでに多くの金融革新を進めていますが、今後は分散型金融(DeFi)の分野でさらにリーダーシップを発揮する可能性があります。
- 銀行システムの進化: DeFiプラットフォームを迅速かつ低コストな国際送金サービスの提供。
- 金融包摂の推進: 中東およびアフリカ地域における金融サービスへのアクセス拡大。
AIとの融合による新たな可能性
AIと技術のシナジーを活用することで、Web3の応用範囲がさらに拡大します。
- データ分析の強化: Web3の分散型ネットワークから得られるデータをAIで分析し、当面の意思決定を支援します。
- パーソナライズされた体験: AIを活用したユーザー体験の最適化により、メタバースやデジタルサービスがより直感的になる。
まとめ
UAEの成功事例は、国家レベルでのビジョン、柔軟な規制、そして税制優遇がWeb3エコシステムの構築にいかに重要であるかを示しています。一方で、日本がWeb3分野で競争力を高めるためには、UAEの事例を参考に、政策の見直しと新たな施策の導入を通じて、この分野での存在感を高めていくことが期待されます。