ドバイは、競争力のある価格、幅広い種類の金、品質保証、免税ショッピング、安全で便利なショッピング環境などから、金を購入するのに最適な場所と言われています。
世界中の金がドバイに集まり、金に関してもドバイがハブ的役割をとして選ばれています。
ドバイに金が集まる理由
ドバイには多くの国から金が集まっており、その主な供給元にはアフリカ諸国、ロシア、イギリス、ガーナ、そしてマリが含まれます。特にアフリカからの金の流入は重要で、アフリカからの金輸入はドバイの金市場において大きな割合を占めています。
推定では世界の金供給量の20%~40%が毎年ドバイを通過しているといわれています。
ドバイは地理的な利点と自由貿易地域(フリーゾーン)の存在により、金取引の中心地となっています。特にドバイ・マルチ・コモディティーズ・センター(DMCC)は、金の精製と取引を統括しており、多くの金精錬所がこの地域で運営されています。これにより、ドバイは金の取引と精製において世界的に重要な役割を果たしています。
アフリカからの供給が多い理由
ドバイの買い手は、アフリカ諸国の低品位の金の延べ棒を低価格で購入します。
これは精製過程で分離された他の貴金属を保持できるためといいます。
元の延べ棒の質量に対して、銀、プラチナ、パラジウムなどの金属が10%占めることがあり、金の他に貴重なレアメタルを手に入れられることもできるからだといいます。
また、UAEは地理的にアフリカに近く、輸送コストが比較的低い地理的利点もあります。
アフリカ諸国からの金は手荷物で持ち込まれることが多く、簡単な書類手続きで輸入が可能などの点が理由にあがります。
ドバイでは、金の運び屋とその買い手は、金を世界市場に持ち込む際に、法律や規制上の障害にほとんど直面しない。UAEの税関職員も銀行も金の買い手も、金の輸入業者に原産地証明書や輸出税の支払い領収書の提出を求めないなどのことから、管理体制の弱さが浮き彫りになりました。
これは、金の密輸や非公式な取引を容易にする一因となっています。
一方でドバイはOECD(経済協力開発機構)の国際基準に沿った厳格な責任ある調達規則を持つことで、信頼性を維持しようとしています。
国連の関税統計データベースであるComtradeによると、2016年にはアフリカが世界最大の金輸出国となり、UAEが最大の輸入国となりました。
同年、UAEは合計54カ国のうち46カ国のアフリカ諸国から金を輸入し、輸出国が申告した量を上回る金の輸入量を記録しています。この輸出入の不一致は、密輸や非公式取引によるものだと貿易経済学者らは述べています。
戦争から急増したロシアとの金取引
現在、UAEにおいて、アフリカ諸国との金取引に次いで大きな輸入先となっているのがロシアです。
欧米諸国の制裁によりロシアの伝統的な輸出ルート(イギリス・スイスなど)が遮断され、UAEがウクライナ戦争で中立的な立場をとって以来、UAEはロシアの金取引の拠点となっています。
2021年には、わずか1.3トンだったものが、ウクライナ侵攻後1年間で、ロシア産の金をUAEは75トン輸入しています。
UAE以外のロシアの金輸出先として中国、トルコがそれぞれ約20トンを輸入しており、UAEと合わせた3カ国が、ロシアの金輸出の99.8%を占めています。
これは、西側諸国で孤立するロシアにとってUAEが、いかに経済的な生命線になっているかが伺えます。
この状況を利用し、割安で金を購入できるなど経済的影響の恩恵を受けているUAEは、制裁には加わらず、中立の立場を維持しています。
欧米諸国は、ロシアの金が制裁を回避するためにUAE経由で取引されていることを懸念しており、UAEに対して公に批判しています。
そして、西側諸国も、UAEに対してロシアとの取引を停止するように圧力をかけています。
ドバイの金取引の問題点
UAE(特にドバイ)は確かに金市場で影響力のあるプレーヤーになりました。
しかし、金取引や自由貿易へのアクセスに対する規制が緩いため、ドバイが汚職の中心地であるという評判が高まっています。
ドバイの金取引に関する問題点はいくつかあります。以下に主な問題点を挙げます。
1. マネーロンダリングとテロ資金供与
ドバイは、金取引におけるマネーロンダリングやテロ資金供与のリスクが高い地域とされています。テロ資金調達を監視する国際組織、金融活動作業部会(FATF)は、ドバイの金取引が不法な活動を助長していると警告しています。特に、金の取引に関する適切な監視や記録が不十分であるため、不法に取得された金が資金洗浄に利用されやすい状況として2024年2月23日までUAEをグレーリスト(監視強化対象国・地域)にリストしていました。
2. 紛争地域からの金の取引
ドバイは、西アフリカのマリなどの紛争地域から不法に採掘された金の主要な取引拠点となっています。このような金の取引は、武装勢力やテロリストの資金源となっており、地域の不安定化を助長しています。金の密輸は、税制の抜け穴や規制の緩さを利用して行われています。
3. 規制の不備と透明性の欠如
ドバイの金取引市場は、適切な規制や監査が行われておらず、取引の透明性が欠如しています。例えば、金の精錬業者は第三者による監査を受ける必要がなく、金の出所を確認する手続きも不十分です。このため、不正取引が横行しやすい環境が整っています。
4. 法律の抜け穴
ドバイの税関規則は手荷物で運ばれる金に対して緩く、取引業者が金の出所や支払いの証拠を提示する必要がないため、密輸が容易に行われています。また、ドバイ・マルチ・コモディティーズ・センター(DMCC)の監査体制も弱く、不正取引を防ぐための取り組みが不十分だとの声も上がっている。
UAEにおけるマネーロンダリング規制の課題
アラブ首長国連邦(UAE)ドバイは急速に発展し華やかに見える都市ですが、経済面に対してマネーロンダリングなどへの対応が脆弱であるため、テロ、麻薬密売、その他の犯罪活動の資金調達の温床にもなっています。
UAEはマネーロンダリングを防止するための多くの法律や規制の導入など、マネーロンダリングと戦うための措置を講じていますが、他国からは、この問題に十分な対応をしていないとして批判されているのが現状です。
UAEにはマネーロンダリングと闘うために多くの法律や規制が整備されているが、問題に効果的に対処できるほど包括的ではない。この包括的な法的枠組みの欠如により、法執行機関がマネーロンダリング事件を効果的に捜査し、起訴することが困難になっていると専門家は述べています。
これらの問題に対処するためには、ドバイおよび関係国が協力して規制を強化し、取引の透明性を高める必要があります。また、法的な枠組みの改善や国際的な協力を通じて、不正な金取引を抑制する取り組みが求められます。