UAE政府は2014年にUAE Space Agencyを設立し、宇宙開発への取り組みを本格化しました。
この機関はUAEの宇宙政策を策定し、宇宙関連のプロジェクトを推進する役割を担っています。
アラブ諸国初の宇宙飛行士ハザ・アルマンスーリ(2019年)
2019年9月25日、ハザ・アルマンスーリ(Hazzaa AlMansoori)は国際宇宙ステーション(ISS)に滞在した最初のアラブ諸国の宇宙飛行士となりました。
彼はロシアのソユーズMS-15ミッションでISSに滞在し、科学実験や文化的な活動を行いました。
Congratulations United Arab Emirates
— D.N.S. (@DubaiNameShame) September 25, 2019
We did it #HazzaaAlMansoori #UAEinSpace #UAESpaceAgency pic.twitter.com/cMmdYbMXs9
The #Soyuz MS-15 spacecraft, carrying the #FirstEmiratiAstronaut, #HazzaaAlMansoori, has successfully docked with the #InternationalSpaceStation. After all the necessary checks are complete, the astronauts will enter the ISS pic.twitter.com/DpELnNmj4n
— Dubai Media Office (@DXBMediaOffice) September 25, 2019
火星探査機「ホープ」打ち上げ(2020年)
UAEの火星探査機「ホープ(Hope)」(アラビア語で「アル・アマル」)は2020年7月20日に日本の種子島宇宙センターから打ち上げられました。
この探査機は火星の大気と気候を研究する目的で設計され、2021年2月に火星軌道に到達しました。
ホープミッションはアラブ諸国初の火星探査プロジェクトであり、科学的なデータを収集し続けています。
探査機ホープが捉えた太陽系で最も高い山「オリンポス山」は、高さが20kmを超えるといいます。
また、火星の衛星ダイモス(Deimos)の精密な撮影にも成功しています。
この衛星ダイモスはかつて火星の一部だった可能性があるとも語られます。
Tallest Mountain in the Solar System captured by UAE's Hope probe.#JH_Space pic.twitter.com/SaP9EVNNYr
— Natural Science & History (@joehansenxx) October 30, 2023
これからの宇宙開発計画
マーズサイエンスシティ(Mars Science City)
マーズサイエンスシティは、UAEが将来的に火星に人類の居住地を築くためのシミュレーション都市プロジェクトです。このプロジェクトは、「Mars 2117 Strategy」の一環として、2117年までに火星に人類が住むことを目指しています。
規模と構造:
- 敷地面積: 1.9百万平方フィート(約17.5ヘクタール)
- 予算: 約500百万UAEディルハム(約136百万米ドル)
- 設計: デンマークの建築事務所Bjarke Ingels Group(BIG)とエミラティの科学者、エンジニア、デザイナーのチームによって設計されました。
機能と施設:
- 実験室: 食料、エネルギー、水の研究を行うための実験室や、農業試験および将来の食料安全保障に関する研究を行うための施設が設置されます。
- 博物館: 人類の宇宙探査の偉業を展示し、訪問者に教育プログラムを提供する博物館も併設されます。この博物館の壁は、エミラティ砂を使用して3Dプリントされます。
- シミュレーション施設: 火星の気候や放射線レベルを模擬するための先端技術を備えた実験施設があり、科学者や宇宙飛行士が一年間生活する実験が予定されています。
マーズサイエンスシティの主な目的は、火星の厳しい環境での生活をシミュレートし、将来的な火星探査に必要な技術や知識を開発することです。これにより、持続可能なエネルギー、水、食料の自給自足のイノベーションを推進します。
月探査車「ラシッド(Rashid)」
ラシードローバーは、月面に着陸できる世界最小のローバーです。高さ70cm、長さ50cm、幅50cm。重量はペイロード込みで約10kgですが、高さ10cmまでの障害物を乗り越え、20度の斜面を下ることができます。
ミッションの目的:
- ラシッドローバーには3Dカメラ、モーションシステムセンサー、ソーラーパネルで駆動する通信システムが搭載されています。月の土壌特性、岩石の構成、地質、月面の塵の動き、表面プラズマの状況などを研究することが主な目的です
ラシッドローバーは2022年12月11日にスペースXのファルコン9ロケットでケープカナベラルから打ち上げられました。
日本の月着陸機「ハクト-R」に搭載され、月への低エネルギー経路を取ることでコストを抑えつつ、2023年4月の着陸を目指していましたが、最終段階の着陸で失敗、軟着陸ができずに月面に衝突してしまったようです。
最初の月面ミッションから学んだ教訓
最初のラシッド探査車は、日本の企業であるispaceが製造したHAKUTO-Rに搭載されて打ち上げられました。
しかし、ソフトウェアの問題で高度を誤算したため、着陸に失敗し、最終的には着陸の直前に燃料切れとなり結果、軟着陸に失敗。
MBRSCの副局長の一人アル・ライス氏によると、HAKUTO-Rは最終的に失敗したものの、探査車の開発に携わったエンジニアらは月への旅の間、また月周回軌道上で大量のデータを取得することができたといいいます。
「最初のミッションでは月面に到達するまでに4カ月かかったという利点があった」
「そのため、その段階で大量のデータを収集しました。打ち上げ巡航段階から着陸前の最後の数メートルに至るまで、ミッションのパフォーマンスを把握しました。」
「これらすべてが、第2モデルの開発と技術の進歩にも役立ちました。」と彼は語っています。
UAEのミッションチームは諦めず、月探査機ラシッド2を月へ運ぶための月着陸船を求めています。
火星への有人ミッション(2117年までに)
UAEは2117年までに火星に人類を送るという「Mars 2117」計画を発表しています。
この計画は火星における人類の居住を実現するための長期的なビジョンを持ち、さまざまな研究開発が進められています。
先にあげたマーズサイエンスシティやラシッドミッションで得られたデータと経験も、宇宙探査の野心を示す重要な一歩であり、グローバルな月探査と将来の惑星間ミッションに貢献しています。
UAEは商業宇宙産業の発展にも注力しており、国際企業やスタートアップ企業との協力を通じて宇宙産業を活性化させる取り組みを進めています。
宇宙開発においてアラブ諸国のリーダーとしての地位を確立し、国際宇宙コミュニティとの連携を強化しながら、未来の探査と科学研究に向けた多くの計画をUAEは進めているようです。