2024年4月、ドバイで見られた記録的な豪雨とそれに伴う洪水について、多くの人々がクラウドシーディングによる人工降雨が原因ではないかと疑問を持っています。しかし、気候変動専門家や人工降雨に関わる科学者たちは、これを否定し、豪雨は気候変動によるものであると強調しています。
クラウドシーディングとは何か?
クラウドシーディング「雲の種まき」は、日本では人工降雨とも呼ばれ、人工的に雨を降らせる気象制御の一つで、既存の雲に特定の物質を散布して降水を促す技術です。この方法で使用される代表的な物質に銀ヨウ化物があり、これが雲中の水蒸気と結びついて雨滴を形成します。しかし、この技術は既に存在する雨雲に対してのみ有効であり、大規模な雨を創出するものではありません。
科学者の見解
インド工科大学カンプール校のサッチダナンド・トリパティ教授は、今回のドバイの豪雨に人工降雨が関与しているとの見解を否定しました。「人工降雨は嵐の初期段階で試みられることが多いですが、この場合にはすでに強化された嵐がオマーン湾から発生しており、そのようなシステムに降雨誘発剤を撒くことは非常に危険です」と彼は述べています。また、人工降雨が降水量を25%増加させることができるとしても、今回記録された降水量の大部分は自然の現象によるものです。
気候変動の影響
元地球科学省事務次官のマドハバン・ラジーヴァン氏は、「これは気候変動の明確な兆候です。巨大な雷雨がシノプティック系によって引き起こされ、全世界のどこでも、いつでもこのような現象が発生する頻度が増加しています」と語っています。地球温暖化により、雨雲が保持できる水分量が増え、降水イベントの強度が増すため、より激しい雨が降る傾向が強まっています。
UAEの人工降雨プロジェクト
UAEでは2002年から雨量を増加させる実験が行われており、周囲の地域に雨をもたらす気象システムが発達すると航空機を用いた人工降雨が試みられます。しかし、これらの努力により降水量が自然に比べて15%増加するに過ぎません。
この事例からも明らかなように、ドバイを含む世界各地で観測される極端な気象現象は、クラウドシーディングなどの人工降雨よりもむしろ気候変動が大きな原因であると考えられます。私たちはこれからも、気候変動による影響に直面することが予想され、その対策と認識の向上が急務となっています。