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ドバイでも影響、AWS障害で世界的なシステムダウン

ドバイニュース:ライフ

投稿日：2025-10-21

2025年10月20日、世界最大級のクラウドサービス「Amazon Web Services（AWS）」で大規模な障害が発生しました。
AWSは、数多くのウェブサイトやアプリを支える「インターネットの裏方」として機能しており、障害の影響は世界中に波及しました。SNSやオンラインゲーム、ECサイトなど、日常的に使われている多くのサービスが一時的に停止しました。

障害の概要：米国東部リージョン「us-east-1」で発生したDNS障害

AWSによると、この障害は米国東部（バージニア州）に位置する「us-east-1」リージョンで起きた運用上の問題が原因でした。
主な要因は、インターネットの住所録のような役割を担うDNS（ドメイン・ネーム・システム）関連の不具合です。
これにより、世界各地のサービスがAWSの基盤サーバーにアクセスできなくなり、多くのアプリやウェブサイトが利用不能となりました。

影響を受けた主なサービスは次の通りです：

カテゴリ	影響を受けたサービス例	主な影響内容
ソーシャル／エンタメ	Snapchat、Roblox、Fortnite、Reddit	ログイン不可、通信エラー
ショッピング／金融	Amazon.com、Coinbase	購入・取引の遅延や停止
ビジネスツール	Zoom、Canva、Monday.com、Jira	会議や作業の中断
その他	Autodesk、Typeform	認証エラー、データ送信失敗

AWSは障害発生から約2〜3時間後に「サービスが回復傾向にある」と発表。
ただし、一部のシステムでは完全復旧まで時間を要しました。

各地の影響：UAEを含む世界中でビジネス活動が停滞

ドバイで活躍する女性起業家、Jen Blandosさん（Female Fusionの創業者兼CEO）は、この障害を「ツールの50%が使えなくなった悪夢」と振り返ります。Female Fusionは、女性起業家向けのネットワーキングプラットフォームで、AWSを基盤としたKajabi（ビジネスプラットフォーム）を使っていました。障害中、Kajabiは頻繁に更新を通知してくれましたが、「待つしかなく、何もできなかった」とJenさん。ZoomやCanva、AIツールのPerplexityもダウンし、日常業務の半分がストップしました。

そんな中、Jenさんのチームはバックアップデータのおかげで何とか乗り切りました。同僚がクライアントの連絡先を探せなくなった時、週1回ダウンロードしているオフライン版の連絡リスト（直近は日曜更新）から情報を引き出し、業務を継続。Jenさんは「これがなければ大損害だった」と語ります。日本企業でも、Google DriveやOneDriveで定期バックアップを取る習慣が似ていますが、UAEの起業家のように「オフライン＋オンラインバックアップ」の二重体制が鍵でした。

IT専門家らは、「UAEのようにデジタル化が進む市場ほど、単一のクラウド依存がリスクになる」と指摘しています。

専門家の視点：「単一依存からの脱却」が鍵

ドバイ拠点のデータ分析企業 PangaeaX のCEO、ジャッド・エリオット・ディブ（Jadd Elliot Dib）氏は次のようにコメントしています：

「AWSなど単一のクラウドサービスに全面的に依存することはリスクです。
多地域分散やハイブリッド構成（クラウド＋自社サーバー）を採用し、冗長性を高めることが不可欠です。」

同様に、各国の専門家も今回の障害を「クラウドの利便性と脆さを同時に示す出来事」と評し、企業に対し「リスク分散」「バックアップ体制」「代替手段の確保」を呼びかけています。

日本企業への示唆：今こそ「デジタル耐震」を──ランサムウェア被害の教訓も

UAEの事例は、日本企業にとっても他人事ではありません。日本でもAWSやAzure（Microsoftのクラウド）を使っている企業は多く存在しています。加えて、2025年に入り、日本企業を狙ったランサムウェア攻撃が急増しており、AWSのような「外部障害」だけでなく、「内部侵入型」の脅威も無視できません。最近の事例として、アサヒグループホールディングスとアスクルが挙げられます。

アサヒグループは9月29日、ロシア拠点のハッカー集団「Qilin」によるランサムウェア攻撃を受け、内部ネットワークが侵害されました。これによりビール生産ラインが停止し、従業員は「ペンと紙」に戻る事態に。攻撃者は27GBの個人・財務データを盗んだと主張し、身代金要求が続いています。同社は10月8日と14日に更新を発表しましたが、データ漏洩の可能性が残り、供給 chain全体に影響が出ました。

一方、アスクルは10月19日、ランサムウェア感染でシステムがダウン。オフィス用品の通販サイト「ASKUL」などの受注・出荷が停止し、物流を委託する無印良品（Muji）やロフトのオンライン販売も連鎖的に中断。回復の見通しは立っておらず、年末商戦への打撃が懸念されています。専門家は「日本企業は英語圏に比べてセキュリティ投資が少なく、標的になりやすい」と指摘しており、アサヒとアスクルの事例は「サプライチェーン全体の脆弱性」を露呈しています。

この機会に、以下のポイントをチェックしてみてください：

バックアップの徹底：データを週1回オフライン保存。クラウドだけに頼らない。ランサムウェア対策として、3-2-1ルール（3つのコピー、2つのメディア、1つのオフサイト）を導入。
代替ツールの準備：ZoomがダメならTeamsやMeetを即切り替え。アスクルのように取引先依存を減らす多角化。
多重化とセキュリティ強化：1社依存を避け、複数プロバイダーを組み合わせる。ランサムウェア対策として、ゼロトラストモデルや定期的な脆弱性スキャンを義務化。

AWSの障害は回復しましたが、デジタル社会の脆さを露呈しました。Jenさんの言葉を借りれば、「これで損した起業家は、ビジネスモデルを見直すチャンス」。日本の中小企業も、AWSのような障害からアサヒ・アスクルのようなサイバー攻撃までカバーした「デジタル耐震」を早急に強化しましょう。